はろの毎日

日々の成長

ライブに行った話 その2

12月某日、俺は東京ドームで開催される”あるイベント”に参加するため、現地へ向かっていた。

そのイベントとは「異次元フェス アイドルマスター ラブライブ歌合戦」である。

その名前からわかる通り、アイマスラブライブ、アイドルアニメとして名の知れた2作品が一つの会場でライブを行うという前代未聞のイベントだ。それぞれ長い歴史を持つアニメだが、こういった形で共演することはアニサマを除き過去一度も無かった(はず)ため、この開催が決定した時は大きな話題となった。ラブライブファン兼アイマスファンの俺にとっては夢のようなこのライブ、行かないワケがないだろう。

ただそういった事情からチケットの倍率はとてつもなく高いはずであり、当時はハズレてもしょうがないなといった軽い気持ちで応募した。そして応募したことすら忘れていた数か月後、幸運にも俺のメールに当選通知が届いていたのだった。

 

当選してしまえば後はライブに向けて準備をするだけ…なのだが、俺にはいくつか不安要素があった。

一つはこのライブが俺にとって初めてのコールありのライブであるということだった。初めて行ったライブがコロナによる規制がかかったもので、そこから3度目となるこのライブは俺が初めて経験する”規制が一切ない、本来の姿のライブ”であった。コロナ以前から参加していたファンからすればありがたいことこの上ないだろうが、純粋に生の曲を聴きたい俺はその雰囲気についていけるか心配だった。

もう一つ…これは俺の偏見みたいなものだが、ラブライブファンとアイマスファンで変な対立が起きたりしないかも心配だった。今でこそそれぞれの地位を確立している2作品だが、ラブライブがメディアで注目され始めた頃、両ファンの間で火花がバッチバチに飛び交っていたのを俺は今でもなんとなく覚えている。その時はこんな合同ライブなんてあるはずもなかったため、水面下での争いで済んだが、そんな連中が一度に集まった時、一体何が起きるのだろうかと俺はソワソワしていた。

 

そんなこんなで当日。東京駅からドームまでの距離は近く、開場時刻となる15時までは時間にかなり余裕があるため、俺はまず最初に「科学技術館」へ向かった。

科学技術館とは東京駅と東京ドームの真ん中辺りに位置している子供向けの科学博物館だ。俺も小学生の時、修学旅行で行かされたのを微かに覚えている。

何故今ここへ…?と思う人もいるかもしれないが、ライブのある土日、この施設でちょっとした展覧会と物販が行われていたのだ。会場内の物販は恐らく混雑すると予想していた俺は、こっちでなら列に並ぶこと無くグッズが手に入ると考えていた。予想通りこっちの物販は混雑等一切なく、簡単にグッズを手に入れることができた。ただひとつ予想外だったのは展示スペースにとてつもない待機列ができていたことだった。中を覗いた感じ、とても面白そうな展示だったが俺はこの後のことも考慮し、そっちへ行くのは不本意ながら諦めることにした。

そこからは歩いてドームへ向かった。時間にしてだいたい45分程度、まあまあいい運動になったと思う。ドーム前にある水道橋駅は、ニューデイズでスーパースターのコラボ商品を販売していたり、広告がライブ仕様になっていたりとまさに気合十分といった感じだった。

日高屋で飯を食い、ドンキで多少時間を潰した後はドーム内に入り、散歩がてらその盛況ぶりを目に焼き付けていた。東京ドームに来るのはガキの頃以来だったが、ジャンプショップやゲームコーナー、アミューズメントパーク等の施設は当時と大きく変わった様子はなかった。

この日の東京ドームは異次元フェス一色といっても過言では無かっただろう。周囲にはファンが作成したのぼりがずらっと並び、あちこちにあるモニターのほとんどで関連作品の宣伝が流れていた。ひとつ面白かったのは会場内にいたアイマスヲタク達が自分たちのハンドルネームと担当キャラ(イチ推しキャラ)が記された名刺を交換し合っていた光景を見たことだった。こんな文化もあるんだなぁと関心していた。

個人的にセンスを感じたのぼり↓

そして時刻は17時。ドーム内の照明がゆっくりおち、ついにライブが始まった。開幕1曲目はデレマスの「Yes!Party time!!」。この曲はアイマスシリーズの中でも比較的有名な曲であるため、イントロからすぐに分かる…はずだった。

俺はヲタクの熱量というものを完全に舐めていた。イントロが流れた瞬間、というかもう流れる前だったと思う。会場一体で「ウォォッッッッ!!!」とどデカい歓声が上がり、曲なんて聴こえたものではなかった。こんな室内に数時間いるようなら俺の耳はどうかしてしまうのではないかと思った。ましてや俺の席はアリーナの2階。声優たちとの距離も離れていたため、モニターが無ければ誰がどこにいるのかすら分からない状況だった。

この日流れた曲は数にして50曲。前日と合わせるとなんと100曲にもなる。参戦作品のことを考えるとそれくらいが妥当なのだろうが、メドレー形式で次々流れるため、ほとんど休む暇は無かった。

この日の曲はシャニマス、ミリオンを除くとほぼすべて知っている曲で、その選曲もとても良いチョイスだったと思う。サンシャインからはアニメでも印象深かった「MY☆舞TONIGHT」、ニジガクでは俺の大好きなキャラ”かすみん”こと中須かすみの代表曲「無敵級*ビリーバー」、スーパースターからは頭のおかしい元気いっぱいな歌詞で有名な「ビタミン☆SUMMER」...そして特に良かったのが、まだラブライブ界隈でも知名度の低い蓮ノ空女学院のユニット”スリーズブーケ”の楽曲が割と多めに聴けたことだった。

アイマスについては先ほど触れた通りシャニマス、ミリオンについては知識がほとんどなく、デレマスについてもU149を除き、ここ最近はご無沙汰だった。そんなワケで知らない曲がほとんどだろうとと思っていたのだが、この日の楽曲は「流れ星キセキ」「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」「さよならアンドロメダと俺にとってドストライクな曲ばかりだった。

なにより一番すごいのはこれら楽曲全てがその日、一つの場で聞けるということだ。こんなことはもう二度と無いだろう。数十年後に若きヲタクがこの日のセットリストを見た時、きっと現地で見たかったと悔し涙を流すに違いない。

最初こそ周囲のヲタク・コールに一歩引いていた俺だったが、気づけば周りに交じりながら狂ったように叫んでいた。なんというか、人としての尊厳が失われたような感じがしたが、そんなことはもうどうでもよかった。

そしてライブも終盤。立ってるだけとはいえ4時間も経てばへとへとだ。最後に何かしらの隠し玉を持ってくることは大方予想していたが、ヲタクの熱量も多少は下がるだろうと思っていた。そんな中流れた曲は

アイマスチームの歌う「Snow haration」

ラブライブチームの歌うM@STERPIECE

周囲でもはや悲鳴と言ってもいいような歓声が上がった。どちらも今回不在のμ`s、765プロを代表する1曲で、それをあろうことか別作品のキャラが歌う、まさに人生でこの日限りでしか聴けない神曲神演出だった。泣いていた人ももしかしたらいたかもしれない。

 

そんなこんなでこの日のライブは幕を閉じた。この4時間で俺の心は十二分に満たされた。この時の気持ちを自分の語彙力で伝えきれないのがとても残念だ。この後は今日の余韻に浸りながら夜の都会をゆっくり散歩…なんてしている暇は無い。諸々の事情から今夜中には帰らなくてはいけないのだ。人ごみをかきわけなんとか駅まで到着し、ぎゅうぎゅう詰めの新幹線に乗りながら、12時を過ぎたあたりに帰宅した。朝から晩までとにかく動いた1日だったため、体は疲れ切っているはずだが、不思議とそんな気分ははしなかった。

 

今回のライブで感じたことは色々あるが、とりあえず一番強く感じたことは”ヲタクは意外とネットワークが広い”ということだ。自分はこれまで現地イベントに参加したことはあまりなく、SNS上での交流関係は希薄に乏しい。そのため、こういったイベントでは同級生や身内が来ない限り基本的にソロでの参加になってしまうのだ。とはいえ大所帯でガヤガヤするのもそれはそれで苦手だが、今回のイベントはラブライブヲタクとアイマスヲタクが互いの価値観を共有する場でもあったため、誰とも話さずただふらふらしていた俺はどことなくアウェー感があった。

ただ俺は大学を卒業したらもう現地ライブには参加しないと決めている。理由としては金銭的・メンタル的なものもあるが、なにより大きい理由は”いい年した社会人がライブに行き、ペンライトを振って声優を応援するのは如何なるものか”という考えがあるからだ。以前はアニメさえあればといった考えで生きてきたが、ここ最近はさすがにそろそろ引き際を考えた方がいいと思うようになった。まぁアニメから完全に脱却するのは流石に無理なのでせめて現地ライブからは足を洗っておきたい。

そのため大学卒業までの残り数ヶ月、俺は悔いのないような生活を送っていきたいと考えている。とりあえず次回は来月開催されるニジガクの6thライブだ。現状これが俺にとって最後の現地ライブである。