はろの毎日

日々の成長

はろペン自伝 第4部 その7

第7章 沼津再び

 お台場での説明会から1ヶ月が経った。兄貴からはもっと説明会に参加するよう忠告を受けたものの、ことあるごとに東京へ行くのは金銭的に厳しい。かといって静岡で開催される説明会は大した価値も無いため、俺はどうすべきか考えていた。

 ただ悩んでいても時間は待ってくれない。考えるより行動こそ大事だと思った俺は、2月最初の週末に沼津で開催される合同企業説明会に行くことにした。参加する企業はどれも自分が志望している分野のものではないが、エントリーシートを書く際に必要となる”自己PR”と”志望理由”の書き方について、講師から何かしらのアドバイスが貰えればいいなと思っていた。

 企業へのエントリーシート(以下ES)提出は基本3月から解禁される。そのため本来であれば就活生は3月に間に合うよう会社選びと並行して自己PRや長所短所、ガクチカなど書き進めていくのが当たり前なのだが、当時の俺はそんなことは考えてすらいなかった。2月の時点でESの進捗がゼロというのはかなりマズい状況であり、恐らく企業選びよりそっちを進めることの方がこの時は正しかったと思う。ただ、いざ書くにしてもどうやって書けばいいか全然わからなかったため、俺はこの説明会に賭けた。

 そんなワケで沼津へ到着。会場は沼津駅北側にある”プラザヴェルデ”だ。ここは静岡県東部で大きなイベントがある際使用されるホールで、Aqoursがライブで来たことも度々ある。駅から歩いて5分もかからないため、移動手段が電車しかない人間にとってはとても助かる場所だ。また、隣にはBivi沼津もあり、そこの1階にはラブライブサンシャインのプレミアムショップがある。

 割と早めについた俺はBiviで多少時間を潰しながら会場へ向かった。それでもスタートにはまだ30分以上あったため、学生の姿は見られなかった。会場内は半日で回るのには十分な広さだったが、最後に行った説明会があのお台場ということもあったからか、とても小さく感じた。

 そしてスタート15分前、10分前、5分前...俺はこの時ある異変に気付いた。いや、正確には異変自体は前から薄々感じてはいたのだが...

 

 

なんと開始5分前にして、参加者が俺を除いて誰一人いなかったのである。

 俺は戦慄した。兄貴はLINE越しに「企業の人たちに顔と名前を覚えてもらう絶好のチャンスだぞ」と絶賛していたものの、この状況下でとてもじゃないがポジティブな気持ちにはなれなかった。この時はスタッフの人たちの視線がとにかく痛かった。そこから開始直前になってやっと数人やってきてくれたが、最初の全体説明が行われたタイミングでは上の写真の一列目すら埋まっていなかった。

 全体説明終了後、各ブースでの説明が始まったあたりで学生の姿はちらほら見えてきた。それでも満員御礼の状況には見えず、実際参加者0人のブースもいくつかあった。

 俺はまず最初、見知った企業ブースを2~3社回り、途中から同会場で開催されるセミナーに参加した。そこは俺のようにESで悩んでいる学生に対し、親切丁寧に書き方を教えてくれるセミナーだった。

 講師いわく、今から準備するとなるとES解禁となる3月に間に合わせるのは難しいが、4月以降ならなんとかなるらしい。あとは具体的な書き方や企業が注目する部分、やってはいけないことなど教えてくれた。俺としては講師の「まだ心配しなくても大丈夫だよ」が聞けただけでも助かった。

 あとは終了まで適当な企業を回って時間を潰した。個人的に面白そうだと思ったのは、県東部を中心に活動する某農協組合だった。仕事内容は農家の畑を回ったり、野菜の管理をしたりすることが主で、なんだかゆったりしてそうな組合だなぁと思った。自分としては朝から晩までパソコンとにらめっこしている会社より、あちこち動き回る会社の方がいいので、水産業ではないにしても意外と向いているんじゃないかと思った。ただ、試験の日程が4月頭に行われることが自分にとって大きな問題だった。詳しくはいずれ語る...はず。

 終わったのは17時頃だったと思う。会場を出た後はゲーマーズで本を買い、商店街を少しふらついて帰宅した。薄暗い町中にひっそり佇むゲーマーズは少しエモさがあった。

 今回は企業選びというよりESの書き方を学ぶために参加した説明会だったが、結果としてはまぁそこまで悪くなかったと思う。来ていた企業はさっき説明した農協のほか、県東部に工場を構える中小企業、物流企業などだった。また、伊豆半島にある旅館が来ていたのが県東部ならではだなと思った。興味本位で参加したが、給仕や接客など自分には到底無理そうな仕事内容だった。地味に嬉しかったのが帰りがけ、ものすごく分厚い就活のガイドブックをお土産にくれたことだった。

 自分がどんな企業を保険にしたいかはまだ見つかっていない。ただ俺は就活本番で出遅れないよう、ガクチカや自己PRの構想は一通り考えておこうとこの日決意するのだった。

 

続く