はろの毎日

日々の成長

はろペン自伝 1.5部 その2

「はろペン自伝 哀・戦士編」

今でこそキモオタアニオタな俺だが、現実の女の子を可愛いと思ったことはちゃんとある。特に印象的なのは小5の時、同じクラスにいたRちゃんだ。

それまで女の子など一切興味なかった俺だが、初めて彼女を見た時俺は素直に可愛いと思った。といっても別に付き合いたいとかお話したいとかそういう願望はなく、言うならばアイドルをTVで見るような感覚で彼女をスケベな目で見ていた。

誰に聞いたか覚えていないが、彼女の祖母は外国人らしく、整った顔立ちや大人びた振る舞いがそれを醸し出していた。実際、俺以外にも彼女に惹かれていたヤツは少なくなかったが、肝心なところでシャイだったクラスの男子共は誰1人として動こうとせず、彼女と友達になるなんて夢のまた夢の出来事であった。

それからというもの、特に何が起きたわけでなく季節は夏になった。以前少し触れたが、この年この季節は朝霧高原で宿泊訓練があった。この宿泊訓練で俺は偶然にも彼女と同じ班になってしまったのだ。恐らく皆から羨望の眼差しを向けられていたであろう俺は、これを機に彼女と色々話してみようと思ったのである。

班員は俺含め男子3人、女子2人の5人班だった。クラスの女子ガチャでSSRともいえる彼女を引き当てたのは喜ぶべき事実なのだが、男子ガチャの方は大爆死であった。1人はクラスの中でも群を抜いて真面目で頭が良く、皆から慕われている「コーくん」だ。彼は良い、むしろ下手な男子よりも遥かに良い。問題はもう1人だ。詳しく話すと色々引っかかってしまうので伏せておくが、色々抱えたヤベー奴だ。恐らくサッカーグループとかと混ぜてしまうと虐めに繋がると予想した担任が半ば無理やり俺たちの班にぶち込んだのだろう。「コーくん」がいることが何よりの証拠だ。

結局、ソイツの世話に付きっきりだった俺たち班は終始グダグダで、訓練を終えるころには全員グッタリしていた。当然俺とRちゃんの間には何も生まれなかった。

6年生になって俺と彼女は別のクラスになってしまったが、正直俺はどうでもよかった。3組としての生活が楽しかった俺はいつの間にか彼女のことを忘れていたのだ。だがある日、クラスの友人S君がトンでもないことを言ってきた。

どうやら去年からRちゃんのことを忘れられなかったS君は彼女に告白することを決めたそうだ。決行日は夏祭りの夜、アピタ屋上で思いを伝えるらしい。「どうせ無理だろ...」なんとなく気に入らなかった俺はそう思いつつ、結果報告を待つのだった。夏祭りには行かなかった。

夏祭りの翌日、S君の表情は以前と変わった感じはしなかった。振られたんだと感づき、ちょっと安心した俺はそれまでのようにソイツと下らない会話に華を咲かせていた。

だが噂はすぐに回ってきた。...告白は成功したらしい。しかもあの夜、アピタ屋上でキスもしたらしい。俺は何故だかショックだった。別に何かに負けたわけでもなければ恥をかいたわけでないのにその日は酷く落ち込んでしまった。

S君からその事実をはっきり聞いた俺は、彼と関わることをやめようと思った。しかし数日後、彼からある依頼を俺は受けたのだった。

どうやらS君とRちゃんで文通を始めたらしい。しかし、彼女と毎度顔を合わせるのが恥ずかしい彼は、俺に配達係になってくれるよう頼んできたのだ。フザけるなと言いたかったが、なんかもうどうでもよかった俺はそれを承諾するのだった。

本当なら中身を読むことは禁止されていたが、俺は隙を見つけては会話文が記してあるノートの中を覗いていた。「昨日、Kと喧嘩した。ウザい」「そうなんだー!仲直りしなきゃダメだよ(笑)」こんな感じの薄っぺらい会話が続き、俺は鼻で笑いながら彼女にノートを渡すため隣のクラスへ足を運んでいた。厄介だったのは、向こうも受取人を別に用意していたことで、文通というよりは麻薬の取引をやっているような感じだった。

2人が付き合っていることはお互いの両親も知っていたらしく、この先マジでどうなるんだとクラスメイト全員が思っていた矢先、ある衝撃の事実が俺の耳に入ってきた。

なんと彼女は小学校を卒業すると同時に、アメリカへ旅立ってしまうとのことだ。結局、S君とRちゃんの付き合いはそこで終わった。最後がどうなったかは俺は知らないが、双方納得した形で幕を閉じたらしい。やれやれ一安心、俺はそんな思いでその後もS君と友人関係を続けていくのであった。

 

3年後、彼女は帰ってきた。あろうことか同じ中学にだ。俺はS君の反応を伺ったが、踏ん切りがついていた彼はもう彼女に目を向けることは無かった。

ちなみに3年ぶりに見た彼女は丸くなっていた。言葉の綾ではなく、正真正銘「丸く」なっていた。もうあの頃の面影は無くなっていたのだった...

アメリカとは恐ろしい国だ。そう思いながら俺は給食の献立表を眺めるのであった。